越境ECの始め方|決済・配送・関税・表示で最初に決めること

越境ECの解説は、市場規模と課題の一覧で終わるものが多く、実際に何を決めればよいかが見えにくいと感じます。自社で海外向けのストアを運営している立場から、最初に決めることを順番に整理します。
越境ECは、海外のお客様にネットで商品を売ることです。日本の事業者が、米国や欧州、アジアのお客様に、自社のECサイトや海外のモールを通して商品を届けます。
越境ECの解説記事は、市場規模と課題の一覧で終わるものが多く、実際に何から決めればよいかが見えにくいと感じます。2025年以降は、米国の関税の仕組みやEUの製品の表示の決まりが変わっていて、古い記事の前提のままだと判断を誤ります。
当社(株式会社ULTRO)はECの支援会社ですが、自社でも「the MA walls」というアートのストアを運営していて、お客様はほぼ海外です。この記事では、その経験もふまえて、越境ECの始め方と、最初に決めることを整理します。制度とShopifyの機能は、2026年10月時点の公式情報で確認したものです。
越境ECとは?市場の大きさ
経済産業省の調査によると、2024年に米国の消費者が日本・中国の事業者からネットで買った額は2兆7,144億円、中国の消費者が日本・米国の事業者から買った額は5兆7,769億円でした。中国の消費者が日本の事業者から買った額は、そのうち2兆6,372億円です。
日本の消費者が米国・中国の事業者から買った額は4,410億円なので、日本の事業者から見ると、買われる側の市場のほうが大きいことが分かります。
越境ECの始め方は3つ
| 始め方 | 内容 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 海外のモールに出す | Amazon(米国など)やeBayなど、海外のモールに出品する | まず海外で売れるかを試したい。集客をモールに頼りたい |
| 自社ECをつくる | Shopifyなどで、海外のお客様向けの自社ECをつくる | ブランドとして続けて売りたい。顧客データを自社に残したい |
| 国内のサイトに海外から買ってもらう | 国内のECサイトに、海外対応の購入代行・転送サービスをつなぐ | 手間をかけずに海外からの注文を受けたい |
どれか1つに決める必要はありません。モールで反応を見て、売れる国が分かってから自社ECに力を入れる、という順番もあります。
最初に決めること
どの始め方でも、次の5つは最初に決めておきます。
1. どの国に、何語・何の通貨で売るか
最初に、売る国を決めます。全世界に送れる設定にしても、言語、通貨、配送日数、関税、表示の決まりは国ごとに違います。最初は、送れる条件と表示の決まりを確かめられた国に絞ったほうが、問い合わせやトラブルが減ります。
Shopifyでは「マーケット」の機能で、国や地域ごとに、言語、通貨、ドメインを分けられます。日本の料金ページによると、多言語の表示、現地通貨での価格の表示(Shopifyペイメントが必要)、地域ごとのドメイン、関税と税金の見積もりと徴収は、全プランに含まれています。地域ごとにストアの見た目を変えるのはAdvanced以上のプランです。
2. 決済:通貨と支払い方法
海外のお客様は、国によって使い慣れた支払い方法が違います。カードのほか、PayPal、Apple Pay、Google Pay、Shop Payなどを用意しておくと、選べないことで離れるお客様を減らせます。
日本のストアでShopifyペイメントを使う場合、入金されるのは円だけです。お客様がドルやユーロで払った場合は円に換算され、通貨換算の手数料がかかります。海外で発行されたカードの手数料は、国内のカードより高く設定されています(Basicプランで国内3.55%、海外3.9%。2026年10月時点)。
3. 配送:どこから送り、何日で届くか
配送で決めるのは、どこから送るか、何日で届くか、送料をどう見せるかの3つです。
日本から国際郵便や国際宅配便で送る方法のほか、海外の拠点で作って現地から送る方法もあります。たとえばプリントオンデマンドのPrintfulは、米国、英国、カナダ、メキシコ、ラトビア、スペインに自社の拠点を持ち、お客様に近い拠点で作って送る仕組みです。
送料は、チェックアウトで別にかかると、そこで離れるお客様がいます。送料を価格に含めて「送料無料」にするか、別に表示するかは、利益の計算とあわせて決めます。
4. 関税:誰が払うか
関税と輸入時の税は、誰が払うかで2通りに分かれます。
| 形 | 内容 | 気をつけること |
|---|---|---|
| DDU・DAP | お客様が、商品を受け取るときに払う | 受け取りのときに請求されて驚き、受け取りを断られることがある |
| DDP | 売り手が先に払い、価格に含めるか、チェックアウトで集める | 売り手が国ごとの税額を把握しておく必要がある |
Shopifyでは、チェックアウトで関税と輸入税を集める機能があります。使うには、商品にHSコード(輸出入の品目の番号)を登録しておく、DDPに対応した配送業者のラベルを使う、などの条件があります。
米国向けは、2025年に前提が変わりました。 800ドル以下の荷物を関税なしで輸入できる仕組み(少額輸入の免税)は、2025年8月29日から、すべての国について停止されました。2026年6月には米国税関が規則として停止を続けることを決め、法律による廃止は2027年7月1日とされています。米国向けの低い価格の商品も、関税がかかる前提で考える必要があります。
Printfulは、この変更を受けて、可能な範囲で米国向けをDDPに切り替え、注文主にも購入者にも追加の費用はかからないと案内しています。使っている配送や生産のサービスが、どちらの形で送っているかを確かめておきます。
5. 表示:各国の決まり
国によって、商品ページに書かなければならないことがあります。EUでは、2024年12月13日から一般製品安全規則(GPSR)が適用されています。EUの外の事業者がEUのお客様に売るときは、次の情報を商品ページからたどれるようにしておく必要があります。
- 製造者の名前と連絡先
- EU域内の責任者(Responsible Person)の名前と連絡先
- 製品の安全情報(素材、使い方、注意点など)
EU域内の責任者を誰にするかは、使っている生産・配送のサービスの案内を確認してください。Printfulは、ホワイトラベル(Printfulの名前を表に出さない運用)を保つため、指定する事業者をEUの責任者として記載するよう案内しています。
食品や化粧品は、成分表示や輸入の手続きが国ごとにさらに細かく決まっています。売る前に、その国の規制を確かめる必要があります。
自社で越境ECをやってみて
the MA wallsは、和の考え方を取り入れたアートのポスターと額装の作品を、Shopifyで海外のお客様に売っているストアです。上の5つは、次のように決めています。
| 項目 | the MA walls の場合 |
|---|---|
| 売る国 | 米国、欧州・英国・カナダ・オーストラリアなど、その他の地域、の3つのマーケットに分けている |
| 言語・通貨 | 英語のみ。基準の通貨は米ドルで、現地の通貨での表示もオン |
| 決済 | カード、Shop Pay、PayPal、Apple Pay、Google Pay |
| 配送 | 注文が入ってから印刷し、Printfulの拠点から出荷。送料は価格に含めている |
| 表示 | EUのGPSR向けのページを用意し、各商品ページからリンクしている |
やってみて分かったのは、海外のお客様が買う前に迷うことは、国内よりも多いということです。届くまでの日数、関税がかかるか、返品できるか、サイズは合うか。当社では、こうした質問への答えをサイトのFAQにまとめ、AIがストアについて答えるときの情報源(Shopify Knowledge Base)にも入れています。やり方はShopify Knowledge Baseの記事に書きました。
関税や表示の決まりは、ここ1〜2年で何度も変わっています。始めたあとも、売っている国の制度と、使っているサービスの案内を定期的に見直す必要があります。当社も、記事を書くにあたって改めて確かめ、見直す点がいくつか見つかりました。
ブランドとして直接売る形(D2C)そのものの考え方は、D2Cの記事にまとめています。
参考にした公式情報
- 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省、2025年8月26日)
- 料金プラン(Shopify)
- Managing markets(Shopifyヘルプセンター)
- Charging duties and import taxes(Shopifyヘルプセンター)
- Supported payout currencies(Shopifyヘルプセンター)
- Where are Printful products printed?(Printful)
- Import tariffs(Printful)
- GPSR(Printful)
- Regulation (EU) 2023/988 on general product safety(EUR-Lex)
- CBP suspends de minimis exemption(KPMG、2026年6月)
よくある質問
越境ECは個人でも始められますか?
始められます。海外のモールへの出品や、Shopifyなどで自社ECをつくる方法は、個人でも使えます。ただし、関税や各国の表示の決まりは個人でも同じようにかかるので、売る国の条件は先に確かめておく必要があります。
越境ECの関税は誰が払いますか?
決め方は2通りあります。お客様が商品を受け取るときに払う形(DDU・DAP)と、売り手が先に払って価格に含める形(DDP)です。受け取り時に請求されると、受け取りを断られることがあるので、どちらにするかを決めてサイトに書いておきます。
米国向けの少額輸入の免税がなくなったのは本当ですか?
本当です。800ドル以下の荷物を関税なしで輸入できる仕組みは、2025年8月29日からすべての国について停止されました。2026年6月には米国税関が規則として停止を続けることを決め、法律による廃止は2027年7月1日とされています。米国向けは、関税がかかる前提で価格と配送の条件を見直す必要があります。
ShopifyでEUに売るとき、何が必要ですか?
2024年12月13日から、EUの一般製品安全規則(GPSR)が適用されています。EUの外の事業者がEUのお客様に売るときは、製造者の情報やEU域内の責任者、製品の安全情報を、商品ページからたどれるようにしておく必要があります。
日本のShopifyストアで、ドルで売上を受け取れますか?
Shopifyペイメントの場合、日本のストアの入金通貨は円だけです。お客様がドルなどの外貨で払った場合は円に換算して入金され、通貨換算の手数料がかかります。
- 越境ECの始め方は、海外モール、自社EC、国内サイトに海外から買ってもらう、の3つ
- 最初に決めるのは、売る国、決済、配送、関税を誰が払うか、各国の表示の決まり
- Shopifyは多言語・現地通貨・関税の見積もりと徴収を全プランで使える。ただし入金は円だけ
- 米国の少額輸入の免税は2025年8月29日に停止。米国向けは関税がかかる前提で考える
- EUに売るならGPSRへの対応が要る。製造者、EUの責任者、安全情報を商品ページからたどれるようにする
この記事を書いた人永田 龍史
株式会社ULTRO 代表取締役Shopify Partner。Shopifyストアの構築・保守・広告運用・CRMを一気通貫で担当。個人として運用した広告費は累計40億円超。計測設計から逆算して、利益が伸びる仕組みを作っています。Google 広告の認定資格(検索・ディスプレイ・動画・ショッピング・アプリ・P-MAX・測定)と Google アナリティクス認定資格を保有。
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