D2Cとは?自社ECで実際にやることと、始める前に決めておくこと

D2Cの解説は定義とメリットで終わるものが多く、実際に何をどの順番でやるのかが見えにくいと感じます。自社でもD2Cのストアを運営している立場から、仕事の順番と、始める前に決めておく数字をまとめます。
D2Cは、ブランドが自社で企画した商品を、卸や小売店を通さずに、自社のECサイトなどで直接お客様に売る形のことです。Direct to Consumerの略で、DtoCとも書きます。
D2Cの解説記事は、定義とメリット・デメリット、海外の有名ブランドの例で終わるものが多く、実際に何をどの順番でやるのかが見えにくいと感じます。
当社(株式会社ULTRO)はECの支援会社ですが、自社でも「the MA walls」というアートのストアを運営しています。デザインから販売まで自社で持ち、Shopifyで直接お客様に売っているので、D2Cの形です。この記事では、その経験もふまえて、D2Cで実際にやる仕事の順番と、始める前に決めておく数字をまとめます。
D2Cとは?B2Cとの違い
似た言葉と並べると、違いが分かりやすくなります。
| 言葉 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| B2C | 企業が消費者に売る取引の全体 | 小売店、モール、自社EC、すべて含む |
| D2C(DtoC) | ブランドが自社で企画した商品を、卸や小売を通さず直接売る | 自社ECで自社ブランドの商品を売る |
| B2B2C | 企業が、別の企業の販路を通して消費者に売る | メーカーが小売チェーンに卸して売る |
B2Cの中に、D2Cという売り方がある、という関係です。D2Cの「直接」は、間に卸や小売店を入れないという意味で、販路が自社ECだけという意味ではありません。モールに出店しながら、自社ECを中心に置くブランドも多くあります。
D2Cの市場規模について
D2Cの記事でよく引用されるのが、「国内のD2C市場は2020年に2.22兆円、2025年に3兆円」という数字です。これは2020年9月に民間企業(売れるネット広告社)が出した調査で、2020年の値も含めて見込みと予測です。実績ではありません。2024年以降のD2Cの実績を示す公的な統計は、この記事を書いた時点で見つかりませんでした。
参考になるのは、経済産業省の電子商取引の調査です。2024年の物販のBtoC-ECは15兆2,194億円、物販のEC化率は9.78%でした。D2Cはこの一部ですが、どれだけを占めるかは分かっていません。
D2Cのメリットとデメリット
| 内容 | |
|---|---|
| 粗利 | 卸や小売の取り分がないので、1点あたりの粗利が厚くなる |
| 顧客データ | 誰が、いつ、何を買ったかが自社に残り、次の提案に使える |
| 価格と見せ方 | 値付け、商品ページ、届け方を自社で決められる |
| 集客 | 小売店の棚がないぶん、お客様を連れてくる費用を自分で持つ |
| 業務 | サイト、広告、問い合わせ、物流まで、自社で回すか外に頼むかを決める必要がある |
メリットとデメリットは裏表です。粗利が厚いのは、集客と運営の費用を自分で持つからです。この費用を払っても利益が残るかを、始める前に確かめておくのが次の章の話です。
D2Cで実際にやることの順番
1. 誰に、何を売るかを決める
最初に決めるのは、商品そのものと、誰のどんな困りごとに応えるかです。
マーケティングの本『ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティング』で著者は、成果のほとんどは「誰に×何を」で決まり、ネットではブランドの名前より商品単体で比べられる、と書いています。ブランドの知名度を武器にできるのは、年商500億円ほどの規模からだ、という主張です。立ち上げのD2Cは、ブランドの雰囲気より、「この商品でしか解決できないこと」を先に固めるほうが近道になります。
2. 販路と、在庫の持ち方を決める
- 販路:自社ECだけで始めるか、モールや卸も使うか。モールは集客の力を借りられますが、手数料がかかり、顧客データは残りにくくなります
- 在庫:先に作って在庫を持つか、注文が入ってから作るか(受注生産)。在庫を持てば1点あたりの原価は下がりますが、売れ残りのリスクを抱えます。受注生産なら在庫はいりませんが、原価が上がり、届くまでの日数も延びます
3. 自社ECと計測を用意する
自社ECは、Shopifyのようなサービスを使えば、自前でシステムを作らずに始められます。費用の考え方はShopifyの料金の記事にまとめています。
サイトと同時に、計測を用意します。どの広告から来た人が買ったのかが分からないと、次に何にお金をかけるかが決められないからです。GA4の最初の設定はGA4の使い方の記事で説明しています。
4. 集客する
D2Cの集客は、広告、SNS、検索(SEO)の組み合わせになります。SNSと検索は成果が出るまでに時間がかかるので、立ち上げのうちは広告で最初のお客様をつくり、そのあいだにSNSと検索を育てる、という順番が現実的です。
5. 買った人に、次を届ける
D2Cの利益は、2回目以降の購入で大きく変わります。購入後のメール、同梱物、次の商品の提案で、もう一度買ってもらう仕組みをつくります。購入後に送るメールの組み立ては、ステップメールの記事にまとめています。
始める前に決めておく数字
D2Cで一番つまずきやすいのは、売上は伸びているのに利益が残らない状態です。広告で新しいお客様を連れてくるほど、費用が先に出ていくからです。
始める前に、次の数字を決めておきます。
| 数字 | 出し方 |
|---|---|
| 1人あたり利益 | LTV(1人が一定期間に買う合計)×粗利率 − 2回目以降の値引き・維持費 − 獲得単価 |
| 上限の獲得単価 | 1人あたり利益がゼロになる獲得単価。これを超えると赤字 |
| LTVの期間 | 初回購入から12か月など、期間を決めて実績で出す |
前述の本では、利益を5段階で見る方法も紹介されています。粗利から、送料・決済手数料・梱包などの注文ごとにかかる費用を引き、広告費を引き、人件費を割り振り、最後に固定費を引く、という順です。どの段階で利益が削られているかが分かるので、商品ごと、広告ごとに続けるかを判断できます。
LTVの出し方はLTVの計算方法の記事、獲得単価の上限の決め方はCPAの記事で詳しく書いています。
自社でもD2Cをやってみて
the MA wallsは、和の考え方を取り入れたアートのポスターと額装の作品を、海外のお客様に向けて販売しているストアです。
- 販路:Shopifyの自社ECが中心
- 在庫:注文が入ってから印刷して出荷する受注生産。在庫は持っていない
- 価格:送料を商品の価格に含め、チェックアウトで送料がかからない形にしている
- 購入前の不安を減らす工夫:ベッドと並べてサイズを比べる機能や、作品を自分の部屋の壁に試せるARを入れている
やってみて実感したのは、D2Cでは「お客様が買う前に迷うこと」を、店頭の販売員の代わりにサイトがすべて答える必要があるということです。アートの場合、いちばん多い迷いは「部屋に飾ったときの大きさ」でした。サイズ比較とARは、その答えとして作ったものです。経緯はサイズ比較を入れた記録とARを入れた記録に書いています。
受注生産は在庫の心配がないぶん、届くまでの日数と、1点あたりの原価が課題になります。海外に売るときの決済や配送の話は、越境ECの記事にまとめました。
参考にした情報
よくある質問
D2CとB2Cの違いは?
B2Cは、企業がお客様(消費者)に売る取引全体を指し、小売店やモールを通す場合も含みます。D2Cはその中でも、ブランドが自社で企画した商品を、間に卸や小売店を入れずに直接売る形を指します。
D2CとDtoCは同じ意味ですか?
同じ意味です。Direct to Consumerの略で、D2CともDtoCとも書きます。
D2Cの市場規模はどれくらいですか?
よく引用される「2020年に2.22兆円、2025年に3兆円」は、2020年に民間企業が出した予測で、実績ではありません。2024年以降の実績を示す公的な統計は、記事を書いた時点で見つかりませんでした。参考として、経済産業省の調査では、2024年の物販のBtoC-ECは15兆2,194億円、EC化率は9.78%です。
D2Cはモールに出店してはいけないのですか?
そんなことはありません。自社ECを中心にしながら、Amazonや楽天市場、卸を併用するブランドは多くあります。大事なのは、販路ごとに利益と顧客データの残り方が違うことを分かったうえで配分することです。
D2Cを始めるのに、在庫は必要ですか?
必要とは限りません。注文が入ってから作る受注生産(プリントオンデマンドなど)なら、在庫を持たずに始められます。そのかわり、1点あたりの原価は上がり、届くまでの日数も延びます。
- D2Cは、ブランドが自社で企画した商品を、卸や小売店を通さずに直接お客様に売る形。DtoCとも書く
- よく見る「2025年に3兆円」は2020年の予測。実績の統計は見つからなかった
- やることの順番は、誰に何を売るか → 販路と在庫 → 自社ECと計測 → 集客 → 買った人に次を届ける
- 始める前に、1人あたり利益(LTV×粗利率−2回目以降の値引き・維持費−獲得単価)と、広告にかけてよい上限を決めておく
- 受注生産なら在庫を持たずに始められる。原価と届くまでの日数とのトレードオフになる
この記事を書いた人永田 龍史
株式会社ULTRO 代表取締役Shopify Partner。Shopifyストアの構築・保守・広告運用・CRMを一気通貫で担当。個人として運用した広告費は累計40億円超。計測設計から逆算して、利益が伸びる仕組みを作っています。Google 広告の認定資格(検索・ディスプレイ・動画・ショッピング・アプリ・P-MAX・測定)と Google アナリティクス認定資格を保有。
経歴と執筆記事81本を見る → Xでフォローする @Ryushi_ULTRO →自分のストアでは、どうなっているか。
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