Shopifyのカート同期を実機で試した|PCは同期、iPhoneでは同期されなかった

Shopifyのカートが端末をまたいで同期されるようになった、という発表を実機で確かめました。パソコン同士は同期され、iPhoneでは同期されませんでした。試した手順と、運用・計測で気をつける点を整理します。
Shopifyは2026年10月5日、Shopを通じてカートが端末のあいだで同期されるようになった、と発表しました。スマートフォンでカートに入れた商品を、パソコンで開いて続きから買える、という内容です。
本当にそう動くのか、当社が運営しているストアで試しました。結果は、パソコンのブラウザ同士では同期され、iPhoneのブラウザでは同期されませんでした。
この記事では、発表の内容、試した手順と結果、運用と計測で気をつける点をまとめます。検証は2026年10月6日に、1つのストアと1つのShopアカウントで行ったものです。ほかの環境で同じ結果になるとは限りません。
発表の内容
今回の更新の中心は、Shopが買う人を、購入の前の段階から認識できるようになったことです。Shopにログインしたことがあるブラウザなら、ストアを見ている時点で本人と分かります。その結果として、次のことが挙げられています。
- チェックアウトの読み込みが速くなる
- Shop Payのボタンに、前回使ったカードが表示される
- ワンタップでサインインできる
- カートが、端末のあいだ、ストアとShopアプリのあいだで同期される
- カートに商品を残した人に、Shopからリマインドが届く
発表には「すべてのブラウザに対応した」と書かれています。Shop Pay自体の仕組みは、Shop Payの記事で説明しています。
同期される条件
ヘルプセンターによると、カートが同期されるのは、Shopのアカウントを持っていて、次のどれかに当てはまる人です。
- Shopを使って、ストアにログインしている
- 新しいお客様アカウントに、Shopのアカウントと同じメールアドレスでログインしている(従来のお客様アカウントは対象外)
- 別のセッションでShopにログインしたことがあり、ブラウザで認識されている
ストア側では、Shopチャネルを有効にして、お客様アカウントかShop Payを使えるようにしておく必要があります。同期は初期設定でオンです。
制限として、次の3つが書かれています。
| 制限 | 内容 |
|---|---|
| カートは統合されない | 移動先にすでにカートがあると、置き換えられない。同期されるのは1つだけ |
| 販売チャネルの違い | Shopアプリ限定の商品は、ストア側のカートに入っても購入できない |
| 地域 | カートを作った地域と違う地域から買い物をすると、引き継がれないことがある |
試した環境と手順
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ストア | 当社が運営するShopifyのストア(Basicプラン。Shop Payとお客様アカウントを使っている) |
| パソコン | MacのChrome。プロファイルを2つ用意して、別々の端末に見立てた |
| スマートフォン | iPhoneのChromeとSafari。どちらも通常のタブ |
| アプリ | スマートフォンのShopアプリ |
| ログイン | すべて同じShopアカウント。ストアの画面からShopでサインインした |
パソコンの2つのプロファイルは、Cookieも履歴も共有していないので、ストアから見れば別のブラウザです。
結果1:パソコン同士は約30秒で同期された
片方のブラウザで、額装のポスター(フレームはBlack、サイズは16″×20″)をカートに入れました。約30秒後にもう片方のブラウザでカートを開くと、同じ商品が入っていました。フレーム、サイズ、価格も一致しています。
続けて、次の操作も試しました。
| 操作 | もう片方のブラウザ |
|---|---|
| 別の商品を追加する | カートが2点になった |
| 1点を削除する | 同じ商品が消えた |
| 下書きテーマのプレビュー表示のまま操作する | 同期に影響はなかった |
カートの識別子を調べると、2つのブラウザで同じ値でした。片方の中身をもう片方に写しているのではなく、1つのカートを両方から見ている状態です。
カートを開くと、Shop Payのボタンには、カードのブランドと番号の下4桁が表示されていました。発表にあった「前回使ったカードが表示されるボタン」も確認できました。
結果2:国の設定まで、もう片方に伝わった
想定していなかったのが、国の設定です。
このストアは、日本向けは円、アメリカ向けはドルで販売しています。片方のブラウザで国をアメリカに切り替えると、もう片方のブラウザでも、カートの金額が円からドルに変わりました。商品ページも、アメリカ向けの内容に切り替わっていました。国を日本に戻すと、両方とも円に戻りました。
ヘルプには「違う地域から買い物をすると、カートが引き継がれないことがある」と書かれていますが、今回はカートが消えることはなく、国の設定ごと共有されました。
越境販売をしているストアでは、次のようなことが起こり得ます。
- 出張先で国を切り替えて見た人が、帰国後に自宅のパソコンで開くと、海外向けの価格で表示される
- 表示通貨が変わった理由が、お客様には分からない
件数は多くないはずですが、「価格の表示がおかしい」という問い合わせが来たときの原因の候補として、覚えておくと役に立ちます。
結果3:iPhoneでは同期されなかった
パソコンで同期されたあと、同じShopアカウントでiPhoneから試しました。結果は次のとおりです。
| 試したこと | 結果 |
|---|---|
| iPhoneのChromeで、ストアの画面からShopでサインインする | ログインはできた(アカウントのアイコンが表示された)。パソコンのカートは出なかった |
| iPhoneのカートを空にして、再読み込みや回遊をする | 変わらなかった |
| iPhoneでログアウトし、カートが空の状態でサインインし直す | 変わらなかった |
| iPhoneのChromeで商品をカートに入れる | パソコンにも、Shopアプリにも出なかった |
| iPhoneのSafariで同じことをする | Chromeと同じ。どこにも同期されなかった |
| パソコン側のカートを空にしてログアウトしてから、iPhoneで試す | 変わらなかった |
iPhoneのブラウザは、ストアにはログインできていますが、カートはどこともつながっていません。パソコンの状態を変えても同じだったので、「先につながった端末が優先される」という理由でもなさそうです。
原因は特定できていません。考えられることを挙げておきます(いずれも推測です)。
- iPhoneのブラウザは、サイトをまたいで人を認識する仕組みを強く制限している。ChromeもSafariと同じ仕組みで動いているので、結果がそろったことと合う
- 機能が段階的に提供されていて、当社の環境にはまだ届いていない
- Shopアプリが入っているiPhoneでは、ブラウザ側の認識のされ方が違う
発表の「すべてのブラウザに対応」と食い違う結果ですが、1つの環境で試しただけなので、iPhoneでは使えないと言い切ることはできません。お客様から「スマートフォンで入れた商品がパソコンに出ない」と聞かれたときに、起こり得ることとして知っておく、という位置づけです。
3つの結果を1枚にまとめると、次のようになります。
Shopアプリを見ると、同期されているかが分かる
検証を通して分かったのは、カートは端末同士で直接やり取りしているのではなく、それぞれの端末がShopとつながっている、ということです。
- 同期されたパソコンのカートは、Shopアプリの中にも出た
- 同期されなかったiPhoneのカートは、Shopアプリに出なかった
つまり、Shopアプリにそのストアのカートが出ているかどうかで、その端末がつながっているかを見分けられます。お客様に確認してもらうときも、この方法が使えます。
アプリの表示については、気になる動きも2つありました。
- パソコンでカートを空にしてログアウトしても、アプリには前の2点が残ったままだった
- パソコンでログインし直した直後は同期されず、Shopアプリを開いたあとで同期された
どちらも1回の観察ですが、アプリ側の表示は、ストア側の変更をすぐには反映しないことがあるようです。
計測では、同じ人が2人に数えられる
結果を先に図で示します。
カートが同期されても、GA4では、端末ごとに別のユーザーとして計測されます。Shopifyの管理画面では同じお客様の行動としてまとまりますが、GA4にはその情報が渡らないためです。2つのブラウザで、次の値を比べました。
| 見たもの | 2つのブラウザで |
|---|---|
| カートの識別子 | 同じ |
| Shopifyのお客様としてのログイン | 両方とも、同じお客様でログイン済み |
| GA4のクライアントID | 別々 |
| GA4に送っているUser-ID | 送っていない |
Shopifyは2つのブラウザを同じ人だと分かっていますが、GA4は別の人として数えます。GA4で端末をまたいで同じ人と見なすには、ログインしたお客様のIDをUser-IDとして送る設定が、別に必要です。
カートの同期が広がると、次のような購入が増えていきます。
- スマートフォンで広告を見て、ストアに来てカートに入れる
- 夜、パソコンでストアを直接開いて、同じカートから買う
この購入は、GA4ではパソコンの「直接の流入」からの注文として記録されます。広告から来たのはスマートフォンのほうなので、広告の成果としては数えられません。広告の管理画面の数字とGA4の数字のずれが、今より少し広がる方向に働きます。数字が合わない理由の全体像は、アトリビューションの記事で説明しています。
なお、今回の検証では購入までは進めていません。購入がどの流入元に付くかは、仕組みからの説明で、実測ではありません。
運用で気をつけること
今回の結果から、ストアの運用で押さえておきたい点をまとめます。
| 場面 | 気をつけること |
|---|---|
| お客様からの問い合わせ | 「別の端末で入れた商品が出ない」と聞かれたら、Shopでサインインしているか、Shopアプリにカートが出ているかを確認してもらう |
| カゴ落ちの対策 | Shopからもリマインドが届くようになる。自社のカゴ落ちメールと内容や時間が重なっていないかを見る |
| 越境販売 | 国の設定が端末のあいだで共有される。表示通貨についての問い合わせの原因になり得る |
| 効果の見込み | 同期されるのは、Shopのアカウントを持っていてログインしている人だけ。日本ではまだ対象が限られる(当社の推測) |
| 計測 | カートが共有されても、GA4のユーザーは分かれたまま。端末をまたぐ購入は、広告の成果に付きにくい |
カゴ落ちメールの考え方は、カゴ落ちの記事にまとめています。
ストア側で設定することは何もありません。同期を止める方法は、ヘルプセンターには書かれていませんでした。
iPhoneで同期されなかったことを考えると、「どの端末でも同じカートが出ます」とお客様に案内するのは、まだ早い段階です。
今回、確かめられなかったこと
- Androidのスマートフォンでの動作
- 両方の端末にカートがある状態でログインしたとき、どちらが残るか(iPhoneが同期されなかったため、試せていない)
- 購入が、GA4でどの流入元に記録されるか
- Shopからのリマインドが、いつ、どんな内容で届くか
確かめられたものから、この記事に追記していきます。
参考にした公式情報
よくある質問
Shopifyのカート同期を使うのに、設定は必要ですか?
ストア側の設定は要りません。初期設定でオンになっています。前提は、Shopチャネルが有効で、お客様アカウントかShop Payを使っていることです。買う側は、Shopのアカウントを持っていて、Shopでサインインしているか、Shopに認識されている必要があります。
スマートフォンでカートに入れた商品は、パソコンでも表示されますか?
Shopifyのヘルプでは、表示されると説明されています。ただし当社が2026年10月6日に試した範囲では、iPhoneのChromeとSafariで入れた商品は、パソコンにもShopアプリにも出ませんでした。パソコンのブラウザ同士では同期されました。環境によって結果が変わる可能性があります。
カートが同期されているかどうかは、どう確かめられますか?
Shopアプリを開いて、そのストアのカートに同じ商品が出ているかを見ます。当社の検証では、同期されたパソコンのカートはアプリに出て、同期されなかったiPhoneのカートは出ませんでした。
両方の端末にカートがある場合、中身は合算されますか?
合算されません。ヘルプには、カートは統合されず、移動先にすでにカートがあれば置き換えられない、同期されるのは1つだけ、と書かれています。
カートが同期されると、GA4でも同じユーザーとして計測されますか?
されません。当社の検証では、カートは2つのブラウザで同じものを共有していましたが、GA4のクライアントIDは別々でした。User-IDを送っていない限り、GA4では別のユーザーとして数えられます。
- 2026年10月5日の発表で、Shopにログインしている人のカートが、端末のあいだ、ストアとShopアプリのあいだで同期されるようになった
- 当社の検証では、パソコンのChrome同士は約30秒で同期。追加、削除、国の設定まで反映された
- iPhoneのChromeとSafariでは、Shopでサインインしても同期されなかった。原因は特定できていない
- 同期されているかは、Shopアプリにカートが出るかで見分けられる
- カートは1つでも、GA4では端末ごとに別のユーザーになる。User-IDを送らない限りつながらない
- 片方の端末で国を変えると、もう片方の表示通貨も変わる。越境ストアは一度確認しておきたい
この記事を書いた人永田 龍史
株式会社ULTRO 代表取締役Shopify Partner。Shopifyストアの構築・保守・広告運用・CRMを一気通貫で担当。個人として運用した広告費は累計40億円超。計測設計から逆算して、利益が伸びる仕組みを作っています。Google 広告の認定資格(検索・ディスプレイ・動画・ショッピング・アプリ・P-MAX・測定)と Google アナリティクス認定資格を保有。
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