カゴ落ちとは?率の測り方とShopifyでの対策手順

「カゴ落ち率の平均は70%」という数字が独り歩きしています。出どころを確かめたうえで、自社の数字の出し方と、Shopifyの標準機能でできる対策を実画面で追いました。
カゴ落ちとは、カートに商品を入れたまま購入まで進まないことです。ECをやっていれば必ず出てくる話で、解説記事もたくさんあります。
ただ、それらの記事を6本読んでみて、2つ困ったことがありました。引用されている「平均70%」の出どころが記事ごとに食い違っていることと、自社の数字をどこで見るのかがどこにも書かれていないことです。
この記事では、その2つを埋めます。画面と数字は2026年9月18日時点のものです。
「平均70%」は、そのまま比べる数字ではない
日本語の解説記事はほぼ例外なくBaymard Instituteの数字を引きます。ところが、ある記事は「69.57%(2018年)」、別の記事は同じ69.57%を「2023年」、また別の記事は「70.19%(2023年)」。同じ出典のはずなのに年も値も合いません。
出典を直接見ると理由がわかります。この数字は、50件の異なる調査を平均したものです。
2026年9月18日時点で公開されている値は 70.22%(最終更新2025年9月22日)。元になっている50件の内訳は、たとえばこうです。
| 調査 | カゴ落ち率 |
|---|---|
| Uptain 2025 | 71.72% |
| SalesCycle 2023 | 79.53% |
| Fresh Relevance 2022 | 68.70% |
| Fresh Relevance 2021 | 59.22% |
| SaleCycle 2020 | 84.27% |
| Fresh Relevance 2018 | 56.82% |
最小56.82%、最大84.27%。 いちばん古いものは2006年の調査です。平均が動くのは新しい調査が足されるからで、記事ごとに値が違うのは、参照した時点が違うだけでした。
Baymard自身、このリストを作った理由を「50個の数字を引用せずに1つで済むように平均を出した」という趣旨で書いています。つまり引用の便宜のための数字であって、業界のベンチマークとして測定された値ではありません。 「うちは72%だから平均より悪い」という読み方は成り立ちません。
買わなかった理由の内訳のほうが使える
同じ調査元が、購入をやめた理由も出しています。まず、42%は「見ていただけ/買う準備ができていなかった」。これは直しようがありません。カゴ落ち率を0に近づけるという目標自体が無理だ、ということでもあります。
この層を除いた残りの理由がこちらです。
表にすると、次のとおりです。
| 理由 | 割合 |
|---|---|
| 送料・税・手数料などの追加費用が高い | 40% |
| 配送が遅すぎた | 20% |
| カード情報をこのサイトに預けるのが不安だった | 19% |
| アカウント作成を求められた | 18% |
| 手続きが長い・複雑 | 17% |
| サイトにエラーが出た・落ちた | 17% |
| 返品ポリシーに納得できなかった | 13% |
| 合計金額が事前にわからなかった | 12% |
1位が追加費用で、価格そのものではありません。ここが効きます。カゴ落ちメールに割引を付ける前に、送料をいつ見せているかを確認したほうが早いということです。
自社のカゴ落ち率は管理画面で出る
一般平均より、自社の数字と時系列の変化のほうが判断に使えます。Shopifyならストア分析のトップにある「コンバージョン率の内訳」で出せます。
計算はこれだけです。
カゴ落ち率 = 1 −(購入した人数 ÷ カートに追加した人数)
大事なのは、この画面は4段階に分かれていることです。カゴ落ち率をひとつの数字にまとめてしまうと、どこで落ちているかが消えます。
- カート追加 → チェックアウト到達で大きく落ちる → カートの画面か、そこから先に進む導線の問題。送料や合計金額がここで初めて見えていないか
- チェックアウト到達 → 完了で大きく落ちる → チェックアウトの中の問題。入力項目の多さ、アカウント作成の要求、決済手段の少なさ
前者と後者で打ち手はまったく違います。ファネルのどこで落ちているかの見方はECサイトのCVRとは?平均値の見方と改善の優先順位にまとめています。
自社の数字で、どこで落ちているかを出す
「コンバージョン率の内訳」に出ている3つの数字を入れると、カゴ落ち率と、段階ごとの離脱が出ます。初期値は説明用の例です。
計算はお使いのブラウザの中だけで行われ、入力した数字はどこにも送信されません。
式は、カゴ落ち率 = 1 −(チェックアウトを完了 ÷ カートに追加済み)です。段階ごとの離脱は、前の段階の数に対する割合で出しています。
Shopifyの標準機能でカゴ落ちメールは送れる
ここも他社記事がまるごと落としている部分です。6本読んで、Shopifyの名前が出てきた記事はゼロでした。結論を言うと、追加のアプリを入れなくても送れます。
場所は アプリ > Messaging > 自動化(旧Shopify Email。2026年にShopify Messagingへ改称されました)。
「カゴ落ち」と「チェックアウト離脱」は別物
画面を見るとわかるとおり、Shopifyは離脱を3つに分けています。ここを混ぜて語っている記事が多いので、整理しておきます。
表にすると、次のとおりです。
| オートメーション | 誰に送るか |
|---|---|
| 商品ページ離脱をコンバージョンにつなげる | 商品を見たが、カートに入れずに離脱した人 |
| カゴ落ちを回復させる | カートに入れたが、チェックアウトを開始しなかった人 |
| チェックアウト離脱を回復させる | チェックアウトを開始したが、注文を完了しなかった人 |
下にいくほど購入に近く、戻ってくる確率も高いです。まず入れるならチェックアウト離脱から。
しかも料金の扱いが違います。Shopify Messagingのメールは毎月10,000通まで無料で、超過分は1,000通あたり$1。マーケティングオートメーションの送信はこの10,000通に加算されるのですが、チェックアウト離脱のオートメーションだけは加算されません(Shopifyヘルプに明記)。実質無料で回せる、ということです。
送るタイミングは編集できる
テンプレートには待機時間が入っていて、ワークフローの編集から変えられます。
「何時間後がベストか」は、他社記事に1時間後・1〜3時間以内といった数字が出てきますが、出典が示されているものを見つけられませんでした。ここは断定せず、既定値から始めて自社で変えて比べるのが確実です。1通で終わりにせず、1通目と2通目の間隔を変えてみるのも試す価値があります。
送る前に、送っていい相手か確認する
6記事のうち、この話に触れていたものはゼロでした。実務では最初にぶつかるところです。
広告宣伝メールは特定電子メール法で原則オプトイン、つまり事前に同意した人にしか送れません。条文には例外(取引関係にある人など)もありますが、カゴ落ちの相手は買っていない人なので、そこに当てはまるかはケースによります。
確実なのは、チェックアウトで同意を取っておくことです。設定にその場所があります。
既定では「表示しない」になっていることがあります。ここを出しておくと、チェックアウトの途中で離脱した人でも同意済みの状態になり、迷わず送れます。
メールの中身にも表示義務があります。送信者の氏名または名称、受信拒否ができる旨とその通知先、送信者の住所、苦情・問い合わせ先。Shopifyのテンプレートは配信停止リンクは入りますが、住所と問い合わせ先は自分で足す必要があります。
なお、チェックアウト離脱のオートメーションには「宛先」をすべてのお客様に変更できる設定があるとヘルプに書かれています。技術的に送れることと、法律上送っていいことは別なので、ここは慎重に判断してください。ULTROは法律の専門家ではないので、実際の運用は顧問の弁護士などにご確認ください。
戻ってきた1件を、どう評価するか
カゴ落ちメールの管理画面に出る「回収できた注文の金額」は、メールの効果をそのまま表した数字ではありません。カートに入れた人の中には、メールが届かなくても自分で戻ってきて買う人がいます。回収額にはその人たちの注文も入るので、メールで増えた分より大きく見えます。『メールマーケティングの教科書』も、メール経由の売上は「メールがなければ起きなかった売上」の証明ではない、という立場です。
メールで増えた分を知るには、対象になったお客様の一部(1〜2割)を無作為に選んで送らずに残し、送った人と送らなかった人で、購入した割合と1人あたりの売上を比べます。その差が、メールで戻せた分です。
差が分かったら、その差の分のお客様が12か月でいくら使うかで見ると、メールの価値をつかみやすくなります。出し方はLTVの計算方法|実務で使う式とShopifyでの出し方にまとめています。
逆に、標準機能で回してみて手応えがあったら、そこからツールを検討するという順番がおすすめです。Klaviyoのような専用ツールは、待機時間や条件分岐を細かく組めるぶん、同じカゴ落ちでも出し分けができます。ただ月$100前後かかるので、標準機能で1〜2か月動かして数字を見てからでも遅くありません。判断の基準はKlaviyoとは?料金の見方とShopifyでの使いどころに書きました。
カゴ落ちは、段階ごとに積み上げる打ち手のうちの1つです。初回・2回目・定期・休眠のどこが詰まっているかで順番を決めるやり方は、構造のCRMにまとめています。
よくある勘違い
カゴ落ち率は低いほどいい 42%は「見ていただけ」の人です。0を目指す数字ではありません。見るべきは水準ではなく、自社の時系列の変化です。
業界平均と比べたい 比較対象になっている「平均70%」は50件の調査の平均で、元データは57%〜84%とばらついています。比べても意味がありません。
カゴ落ちメールを入れれば戻ってくる 戻ってくるのは、買う気があったのに何かで止まった人だけです。止めた原因(追加費用、入力の多さ、決済手段)がそのままなら、メールを送っても同じところで止まります。
とりあえず割引を付ける やめた理由の1位は追加費用で、価格そのものではありません。割引はいちばん最後の手段です。付けたら付けたで、次から割引を待つ人が増えます。
参考にした情報
- 50 Cart Abandonment Rate Statistics(Baymard Institute。平均値と50件の内訳、購入をやめた理由。2026年9月18日に参照)
- Shopify Messagingメールの価格設定(Shopifyヘルプ。チェックアウト離脱が無料枠に加算されない点)
- Shopify Messaging でマーケティングオートメーションを作成および管理する(Shopifyヘルプ)
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント(総務省)
- メールマーケティングの教科書(安藤健作)
- キャプチャは2026年9月18日時点、自社ストアの画面です。実数値は伏せています
- 検索数は2026年9月18日にGoogle広告のキーワードプランナーで取得(日本、月間平均)
よくある質問
カゴ落ち率の平均は何%ですか?
よく引用されるのはBaymard Instituteの70.22%です(2025年9月22日時点)。ただしこれは50件の異なる調査を平均した値で、元の調査は56.82%から84.27%まで開きがあり、2006年のものも含まれます。Baymard自身「50個の数字を引用せずに済むように平均を出した」と書いています。自社の良し悪しを判定する基準には使えません。
自社のカゴ落ち率はどこで見られますか?
Shopifyのストア分析にある「コンバージョン率の内訳」です。セッション数・カートに追加済み・チェックアウトに到達・チェックアウトを完了の4段階が並ぶので、1 −(購入 ÷ カートに追加)で計算できます。GA4を触らなくても出せます。
カゴ落ちメールはShopifyの標準機能で送れますか?
送れます。Shopify Messaging(旧Shopify Email)の自動化に、商品ページ離脱・カゴ落ち・チェックアウト離脱の3つのテンプレートが用意されています。しかもチェックアウト離脱のオートメーションは、毎月10,000通の無料枠にも加算されません。
カゴ落ちとチェックアウト離脱は何が違いますか?
落ちた場所が違います。カゴ落ちはカートに入れたままチェックアウトに進まなかった人、チェックアウト離脱はチェックアウトを開始したのに注文を完了しなかった人です。Shopifyではこの2つが別のオートメーションになっていて、料金の扱いも違います。打ち手も別なので、まとめて語らないほうがいいです。
カゴ落ちメールは誰にでも送っていいですか?
確認が要ります。広告宣伝メールは特定電子メール法で原則オプトイン(事前の同意)です。条文には取引関係にある人などの例外がありますが、未購入の人が当てはまるかはケースによります。チェックアウトの「マーケティングオプトイン」でチェックボックスを表示し、同意を取ったうえで送るのが確実です。法律の判断は専門家にご確認ください。
カゴ落ちメールに割引は入れるべきですか?
入れる前に理由を確認してください。Baymardの調査で、購入をやめた理由のうち最も多いのは「送料や手数料などの追加費用が高い」(40%)で、価格そのものではありません。追加費用が見えたところで落ちているなら、割引より送料の見せ方を直すほうが効きます。
何時間後に送るのが正解ですか?
一次情報で裏の取れた正解はありません。他社記事には1時間後・1〜3時間以内といった数字が出てきますが、出典が示されていないものがほとんどです。Shopifyのオートメーションは待機時間を編集できるので、自社で変えて試すのが確実です。
- 「平均70%」はBaymardが50件の調査を平均した値。元データは56.82%〜84.27%で、比較の基準にはならない
- 購入をやめた理由の42%は「見ていただけ」。残りの1位は追加費用の高さ(40%)で、価格そのものではない
- 自社の数字はストア分析の「コンバージョン率の内訳」から出せる。1 −(購入 ÷ カート追加)
- カゴ落ちメールはShopify Messagingの標準機能で送れる。チェックアウト離脱分は無料枠にも加算されない
- 送る前に特定電子メール法のオプトインを確認する。チェックアウトの設定でチェックボックスを出せる
この記事を書いた人永田 龍史
株式会社ULTRO 代表取締役Shopify Partner。Shopifyストアの構築・保守・広告運用・CRMを一気通貫で担当。個人として運用した広告費は累計40億円超。計測設計から逆算して、利益が伸びる仕組みを作っています。Google 広告の認定資格(検索・ディスプレイ・動画・ショッピング・アプリ・P-MAX・測定)と Google アナリティクス認定資格を保有。
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