ECサイトのCVRとは?平均値の見方と改善の優先順位

施策を並べる前に、どこで落ちているかを決める。GA4で購入までを5段階に分けて犯人を特定し、着手順を決めるまでの手順です。
ECサイトのCVR(コンバージョン率)を上げたい、という相談はよくいただきます。ただ、検索して出てくる記事の多くは施策が8個から15個ほど並んでいるだけで、自分のサイトでどれから手をつければいいのかは書かれていません。
施策の一覧が役に立たないのは、CVRが下がる理由がサイトごとに違うからです。商品ページで離脱しているサイトと、カートまで入れたのに決済で落ちているサイトでは、打つ手がまったく別になります。
この記事では、施策を選ぶ前にやること、つまり購入までを5段階に分けて、どこで落ちているかを数字で特定する手順をまとめます。そのうえで、段階ごとの打ち手と着手の順番を書きます。画面は2026年9月時点のものです。
CVRの計算式と、分母の決め方
CVRは次の式で出します。
CVR(%) = 購入数 ÷ セッション数 × 100
GA4なら「eコマース購入数」を「セッション」で割った値です。
分母を変えると、次のように数字が変わります。
気をつけたいのは分母です。セッション数ではなくユーザー数で割ると、同じサイトでも数字が大きく出ます。1人が3回訪問して1回買えば、セッション基準では33%、ユーザー基準では100%です。社内の資料と広告レポートで数字が合わないときは、たいていここがずれています。どちらで出しているかを先に決めて、揃えてください。
ECの場合、次の3つは分けて見ておくと判断しやすくなります。
- デバイス別:スマホとPCではCVRが倍以上違うことがあります
- 流入経路別:指名検索とディスプレイ広告を混ぜた平均には意味がありません
- 新規・リピート別:リピーターの比率が上がるとサイトを直さなくてもCVRは上がります
業界平均は、そのまま使えない
「ECサイトの平均CVRは◯%」という数字はよく出回っていますが、自社と比べる材料にはなりにくいのが実情です。理由は3つあります。
- 対象が海外のデータで、日本の商習慣(代引き、コンビニ後払い、モール併売)を含んでいない
- 分母がセッションかユーザーかが明示されていない
- 広告流入だけを集計したものが、サイト全体の平均として引用されている
そのため、平均値をゴールに置くより、自社の過去12か月の実績を基準にするほうが確実です。目標を決めるなら次の順で見ます。
- 直近12か月のCVRを月別に出し、季節変動の幅をつかむ
- 流入経路別に分け、いちばん構成比の大きい経路の数字を基準にする
- その経路で過去最高だった月を、現実的な上限の目安にする
- 目標CVRから逆算して、売上がいくら増えるかを出す
数字を引くなら、カゴ落ち率は比較的よくまとまっています。Baymard Institute は50件の調査をまとめた平均70.22%という数字を公開しています(2006年から2025年の調査、2025年8月時点)。カートに入れた人の7割が買わずに離れる、という前提で設計するのは妥当です。
どこで落ちているかを5段階で決める
ここが本題です。購入までを次の5段階に分けます。
| 段階 | GA4のイベント | この段階で分かること |
|---|---|---|
| 1. 訪問 | session_start | 流入の量と質 |
| 2. 商品ページ到達 | view_item | 探せているか、商品にたどり着けているか |
| 3. カート追加 | add_to_cart | 商品ページで買う気になったか |
| 4. 決済開始 | begin_checkout | カートから先に進む気になったか |
| 5. 購入 | purchase | 決済を完了できたか |
見るのは各段階の通過率です。たとえば商品ページ到達からカート追加が5%を切っているなら、原因は商品ページ側にあります。カート追加から決済開始の落ち方が大きければ、配送料や納期の見せ方を疑います。決済開始から購入で落ちているなら、フォームか決済手段です。
CVR全体の数字を眺めていても、この区別はつきません。施策を選ぶ前に、落ちている段階を1つに絞ってください。
GA4で通過率を出す手順
GA4の「ファネルデータ探索」で作ります。
- GA4(https://analytics.google.com/)で対象のプロパティを開く
- 左メニューの「探索」を開く
- 「データ探索」の画面で「ファネルデータ探索」を選ぶ
作った直後は、初回起動 / 初回訪問、セッションの開始、スクリーン ビュー / ページビュー、購入の4ステップが最初から入っています。これをECの5段階に入れ替えます。
- 設定パネルの「ステップ」の右にある鉛筆アイコンを押す
- 「ファネルのステップの編集」で、各ステップのイベントを session_start、view_item、add_to_cart、begin_checkout、purchase に変える
- 「適用」を押す
- 「内訳」に「デバイス カテゴリ」を入れて、スマホとPCを分ける
- 「経過時間を表示する」をオンにすると、段階間にかかった時間も出ます
これで、ステップごとの完了率と放棄率が表に出ます。
イベントが選択肢に出てこない場合は、eコマース計測が入っていません。Shopifyならカスタムピクセルから送る設定が必要です。add_to_cart や begin_checkout が0のままなら、まずそこを直すのが先になります。
Clarityで「なぜ落ちているか」を見る
GA4で分かるのは「どこで」までです。「なぜ」はClarity(https://clarity.microsoft.com/)のほうが早く分かります。無料で使えます。
見るところを絞ると次の3つです。
- ダッシュボードの「インサイト」:「イライラしたクリック」「デッド クリック」「過剰なスクロール」「クイック バック」の4つが割合で出ます。押せると思って押された場所や、戻られたページが分かります
- レコーディング:落ちている段階のページに絞り、離脱した人の操作を数件見る
- ヒートマップ:スクロール率を見て、大事な情報が見られていない位置にないか確かめる
GA4の数字で仮説を立て、Clarityの録画で裏を取る。この順番が早いです。
段階別の打ち手と、着手の順番
落ちている段階が決まったら、そこに対応する施策を選びます。
表にすると、次のとおりです。
| 落ちている段階 | よくある原因 | 打ち手 | 工数 |
|---|---|---|---|
| 訪問 → 商品ページ | 検索・絞り込みが弱い、広告の着地が合っていない | 絞り込みの項目を見直す、広告の遷移先を商品ページにする | 小〜中 |
| 商品ページ → カート追加 | 写真が少ない、サイズや素材が分からない、レビューがない | 写真の追加、スペック表、レビューの表示、在庫と納期の明示 | 中 |
| カート追加 → 決済開始 | 配送料が最後まで分からない、会員登録が必須 | 配送料をカートで見せる、ゲスト購入を許可する | 小 |
| 決済開始 → 購入 | 入力項目が多い、決済手段が少ない、エラーが分かりにくい | 入力項目を減らす、住所自動入力、決済手段を増やす | 小 |
着手の順番は、下から上がおすすめです。 決済まわりは工数が小さいわりに効き、しかも「買う気がある人」を取りこぼしている箇所だからです。商品ページの改修は効果は大きいものの、写真の撮り直しや原稿が必要で時間がかかります。集客の見直しはさらに時間がかかります。
もうひとつの見方として、その段階を通過している人数を確認してください。決済開始が月に20人しかいないサイトで決済フォームを直しても、増える購入は数件です。その場合は上の段階、つまり商品ページやカート追加を先に直すほうが総量が増えます。工数の小ささと、通過人数の大きさの両方で決めます。
Shopifyの場合にまず触るところ
Shopifyは決済まわりの自由度が低い代わりに、設定だけで直せる部分があります。テーマを触る前にここを確認してください。
- 配送料の表示:カートページで送料が分かるようにする。チェックアウトまで伏せると離脱が増えます
- ゲスト購入:会員登録を必須にしていないか。設定の「顧客アカウント」で変えられます
- 決済手段:Shop Pay、Apple Pay、Google Pay、コンビニ後払いを増やす。カートでの支払いボタン(アクセラレーテッドチェックアウト)も有効です
- チェックアウトの入力項目:不要な項目(会社名、住所2行目など)を任意か非表示にする
- モバイルの表示速度:商品画像のサイズとアプリの数。使っていないアプリはタグが残ることがあります
テーマの改修は、ここを一通り直してからで間に合います。
CVRを上げると売上が下がることがある
最後に注意点です。CVRだけを目標にすると、値引きやクーポンに寄ります。CVRは上がりますが客単価が下がるので、売上が横ばい、粗利は減る、ということが起こります。
見るべきは次の3つを並べた形です。
売上 = セッション数 × CVR × 客単価
CVR改善の施策を入れたら、客単価とセッション数も一緒に確認してください。片方だけ見ていると、改善したつもりで利益を削っていることがあります。
施策の前後で、売上を比べる
セッション数と、施策の前後のCVR・客単価を入れると、売上がどう変わるかが出ます。初期値は説明用の例で、CVRが1.5%から1.8%に上がり、客単価が8,000円から6,500円に下がった場合です。
計算はお使いのブラウザの中だけで行われ、入力した数字はどこにも送信されません。セッション数は、施策の前後で同じと置いています。
式は、売上 = セッション数 × CVR × 客単価 です。「売上が同じになる客単価」は、施策のあとのCVRで、前と同じ売上になる客単価です。これを下回るなら、CVRが上がっても売上は減っています。
うまくいかないときの確認ポイント
GA4のCVRと、Shopifyの管理画面の数字が合わない 集計の基準が違います。Shopifyの「コンバージョン率」はストアのセッション基準、GA4はタグが発火したセッション基準です。広告ブロックや同意管理でGA4側が少なく出ます。どちらかを正とだけ決めて、傾向を追ってください。
add_to_cart や begin_checkout が計測されていない Shopifyのカスタムピクセルからイベントを送る設定が入っていない可能性があります。購入だけ取れていて途中が空、というのはよくある状態です。
通過率がどの段階も低い 流入の質を疑ってください。ディスプレイ広告やSNSからの流入が多いと、全段階の通過率が下がります。流入経路別に分けて見ると、経路の問題か、サイトの問題かが切り分けられます。
CVRが急に落ちた 施策を疑う前に、自分で注文してみます。『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』は、CVRが急に落ちたら、まずカートとサーバーを自分で注文して確かめ、時間帯別の件数を見る、と書いています。特定の時間帯だけ注文がゼロなら、決済やアプリの不具合を疑います。
数字が動いたが、施策の効果か分からない 施策を入れた日と、セール・広告・季節要因が重なっていないか確認します。比較は前年同月か、施策を入れていない流入経路との差分で見るほうが確実です。
計測まわりの準備ができていないとき
このやり方は、GA4のeコマース計測が入っていることが前提です。まだの場合や、数字が怪しい場合は、先にそちらを整えてください。GA4の権限とは?役割の種類と付与手順、外部に渡すときの目安で、社内や外部パートナーにGA4を見てもらうときの権限の考え方をまとめています。
ヒートマップ側はMicrosoft Clarityの共有方法|チームメンバーの追加と権限の違いを参考にしてください。
どこから手を付けるかを毎月決めて、実装まで持っていきたい場合は攻めの保守で対応しています。
参考にした情報
よくある質問
ECサイトのCVRの計算式を教えてください。
購入数 ÷ セッション数 × 100 です。GA4の「eコマース購入数」を「セッション」で割ると出ます。分母をユーザー数にすると数字が大きく出るので、社内で比べるときはどちらで出しているかを揃えてください。
ECサイトのCVRの平均はどのくらいですか?
公開されている業界平均は、対象サイトも集計方法もばらばらで、そのまま自社と比べても判断材料になりません。使うなら、自社の過去12か月の実績と、指名検索・広告・メールといった流入経路ごとの数字を比べるほうが確実です。カゴ落ち率については Baymard Institute が50件の調査をまとめた平均70.22%を公開しています。
CVRが低いとき、まず何から見ればいいですか?
施策を選ぶ前に、購入までを訪問・商品ページ・カート追加・決済開始・購入の5段階に分けて、それぞれの通過率を出してください。いちばん落ちている段階が分かってから施策を選びます。GA4の「ファネルデータ探索」で作れます。
GA4のどのレポートを見ればいいですか?
左メニューの「探索」から「ファネルデータ探索」を作り、ステップに session_start、view_item、add_to_cart、begin_checkout、purchase を順に置きます。段階ごとの完了率と放棄率がそのまま出ます。内訳に「デバイス カテゴリ」を入れると、スマホだけ落ちているといった偏りも見えます。
CVRを上げれば売上は必ず増えますか?
増えないことがあります。値引きやクーポンでCVRを上げると客単価が下がり、売上が横ばいになる場合があるためです。CVRだけを目標にせず、客単価とセッション数を並べて見てください。
ShopifyでCVRを上げるには何から手をつけますか?
決済まわりが先です。配送料をカートの早い段階で見せる、ゲスト購入を許可する、Shop Payなどの決済手段を増やす、入力項目を減らす。ここはテーマの改修より工数が小さく、カゴ落ちに直接効きます。
- CVRは購入数 ÷ セッション数。分母をユーザー数にすると数字が変わるので揃える
- 業界平均は集計方法がばらばらで比較に使いにくい。自社の過去実績と流入経路別で見る
- 購入までを5段階に分け、通過率がいちばん低い段階から直す。施策を先に選ばない
- GA4のファネルデータ探索で「どこが」、Clarityで「なぜ」を見る
- 決済まわり → 商品ページ → 集客の順が、工数のわりに効きやすい
この記事を書いた人永田 龍史
株式会社ULTRO 代表取締役Shopify Partner。Shopifyストアの構築・保守・広告運用・CRMを一気通貫で担当。個人として運用した広告費は累計40億円超。計測設計から逆算して、利益が伸びる仕組みを作っています。Google 広告の認定資格(検索・ディスプレイ・動画・ショッピング・アプリ・P-MAX・測定)と Google アナリティクス認定資格を保有。
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