ROASとは?計算式とCPA・ROIとの違い、目標の決め方

計算式と単位の使い分け、CPA・ROIとの違い、粗利率から目標ROASを逆算する手順、商品別に目標を分けるべきケースまで。
広告のレポートに必ず出てくるROASですが、「いくつあればいいのか」の答えは記事によってばらばらです。それもそのはずで、ROASの合格ラインは商材の粗利率で変わります。平均値を借りてきても自社の判断には使えません。
この記事では、ROASの計算式と単位の使い分け、CPA・ROIとの違い、そして自社の数字から目標ROASを逆算する手順をまとめます。あわせて、ECの現場でROASを見るときに引っかかりやすい点も書いています。広告の管理画面の表記は2026年9月時点のものです。
ROASとは?計算式と読み方
ROASは Return On Advertising Spend の略で、「ロアス」と読みます。広告費に対して売上がどれだけ返ってきたかを見る指標です。
ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費
100を掛けると%表記になります。
| 広告費 | 広告経由の売上 | ROAS(倍) | ROAS(%) |
|---|---|---|---|
| 500,000円 | 1,500,000円 | 3.0 | 300% |
| 500,000円 | 500,000円 | 1.0 | 100% |
| 500,000円 | 250,000円 | 0.5 | 50% |
%と倍のどちらが正しいということはなく、両方使われます。日本語の記事や社内資料では%が多い一方、広告の管理画面では比率のまま出ることがあります。「ROAS 3」と「ROAS 300%」は同じ意味です。目標値を人に渡すときは単位を添える、これだけ守れば混乱しません。
管理画面では「ROAS」という名前で出てこない
Google 広告の管理画面には、ROASという列がありません。表示項目のコンバージョンのグループにある「コンバージョン値 / 費用」がそれにあたります(2026年9月に実画面で確認)。コンバージョン値を送っていない、つまり購入金額を計測に渡していないアカウントでは、この指標は空になります。
入札戦略のほうは名前が違い、公式ヘルプでは「目標広告費用対効果に基づく入札」と呼ばれます。こちらは%で指定します。「ROASで入札したいのに設定が見つからない」というときは、この名前で探してください。
ROASを使うには、コンバージョンに金額が入っていることが前提です。金額を渡していない場合は、まず計測側の設定から手を付けることになります。
ROAS 100%は「トントン」ではない
いちばん誤解されやすいところです。ROAS 100%は、広告費と広告経由の売上が同額という意味でしかありません。売上には原価が含まれているので、この時点ですでに赤字です。
粗利率40%の商品に広告費を50万円使った場合を、先に図で示します。
利益で見るときは粗利率を挟みます。広告費以外の費用を無視して、広告費だけで収支を合わせるラインが損益分岐ROASです。
損益分岐ROAS(%)= 100 ÷ 粗利率
| 粗利率 | 損益分岐ROAS | 売上の10%を利益として残すときの目標ROAS |
|---|---|---|
| 20% | 500% | 1,000% |
| 30% | 約333% | 500% |
| 40% | 250% | 約333% |
| 50% | 200% | 250% |
| 60% | 約167% | 200% |
| 70% | 約143% | 約167% |
右の列は、売上の10%を利益として残す場合の式(100 ÷(粗利率 − 10%))で出しています。粗利率が薄い商材ほど、必要なROASが跳ね上がることが分かります。粗利率20%の商材で「ROAS 300%」を目標にしても、達成した瞬間に赤字が確定します。
ECでは粗利率の出し方に注意する
粗利率を「(売価 − 仕入原価)÷ 売価」で出しているなら、ECの場合はもう少し引くものがあります。
- 送料(送料無料にしている分は自社負担)
- 決済手数料
- 梱包資材と同梱物
- モールやカートの販売手数料
- 返品・キャンセルの見込み
これらを引いた実質の粗利率で計算しないと、損益分岐ROASを低く見積もることになります。特に送料無料のラインを下回る注文が多い商材では、体感よりかなり厳しい数字が出ます。
売価と仕入原価、1件あたりにかかる費用を入れると、実質の粗利率が出ます。初期値は、売価8,000円、仕入原価3,600円、送料や梱包で800円、手数料5%の例です。仕入原価だけで見ると粗利率は55%ですが、費用を引くと40%まで下がります。
計算はお使いのブラウザの中だけで行われ、入力した数字はどこにも送信されません。返品やキャンセルの見込みは含めていません。多い商材では、その分を「送料・梱包など」に足してください。
式は、実質の粗利率 =(売価 − 仕入原価 − 送料・梱包など − 売価 × 手数料率)÷ 売価 です。損益分岐ROASの行は、原価だけで出した場合と、実質の粗利率で出した場合を並べています。初期値の例では182%と250%で、原価だけで見ていると、ROAS 200%でも黒字だと思い込むことになります。
目標ROASの決め方
順番は次の4つです。
- 1件あたりの粗利を出す。上に挙げた費用を引いた実質の粗利で出します
- 損益分岐ROASを出す。100 ÷ 粗利率
- 残したい利益を上乗せする。売上の何%を利益として残したいかを決めて、100 ÷(粗利率 − 目標利益率)で計算します
- 上限CPAを決める。現場では金額のほうが扱いやすい場面が多いためです
4の式はこうなります。
上限CPA = 客単価 ÷ 目標ROAS(倍)
客単価8,000円で目標ROASが250%(2.5倍)なら、上限CPAは3,200円です。入札や停止の判断を担当者に任せるときは、ROASより「1件3,200円まで」のほうが伝わります。
目標ROASと上限CPAを計算する
粗利率と、売上のうち利益として残したい割合を入れると、損益分岐ROASと目標ROASが出ます。客単価も入れると、上限CPA(目標ROASのときに1件にかけられる額)と、損益分岐のCPA(これを超えると赤字になる額)も出ます。初期値は、粗利率40%、残したい利益10%、客単価8,000円の例です。
計算はお使いのブラウザの中だけで行われ、入力した数字はどこにも送信されません。広告費以外の費用は、粗利率に織り込んで入れてください。
式は、上の手順と同じです。損益分岐ROAS = 100 ÷ 粗利率、目標ROAS = 100 ÷(粗利率 − 残したい利益の割合)、上限CPA = 客単価 ÷ 目標ROAS(倍)。粗利率には、送料や決済手数料などを引いた実質の数字を入れます。実質の粗利率は、上の計算で出せます。
注文単価の幅が大きいなら、CPAではなくROASで指定する
ただし、上限CPAが効くのは注文単価がある程度そろっている場合です。3,000円の単品と50,000円のセットが同じキャンペーンに混ざっているようなサイトでは、上限CPAを一本で置くと噛み合いません。 1件3,200円という基準は、3,000円の注文には緩すぎて無駄な獲得を許し、50,000円の注文には厳しすぎて配信が伸びないからです。
上限CPA 3,200円と目標ROAS 250%を、2つの注文で比べます。
目標ROASで指定すれば、単価に応じて許容できる獲得コストが自動で動きます。単価5万円の注文はROAS 250%なら2万円まで使ってよく、単価3,000円の注文は1,200円までになります。
どこからを「幅が大きい」と見るかに決まった基準はありません。注文データで単価の分布を見て決めます。上位と下位で数倍開いているなら、CPAで一本化しないほうが安全です。
利益率やLTVが商品で違うなら、目標も商品別に分ける
もう一段あります。商品によって利益率が違う、あるいは購入後のLTVが違う場合、サイト全体で1つの目標を置くこと自体に無理があります。
- 粗利率60%の商品と20%の商品では、損益分岐ROASが約167%と500%で3倍違う
- 定期購入につながる入口商品と、単発で終わる商品では、許容できる初回ROASが変わる
全体で1つの目標を置くと、利益率の高い商品では取りこぼし、低い商品では赤字を出します。どちらも機会損失です。
この場合は商品(またはカテゴリ)ごとに目標KPIを決めて、キャンペーンや広告グループも分けます。どの商品が入口として効いているかは、Shopifyの顧客コホート分析を初回購入商品で絞ると出ます。手順はLTVの計算方法|実務で使う式とShopifyでの出し方に書いています。
管理の手間は増えるので、いきなり全商品を分けようとしないほうがいいです。粗利率の近いもの同士を2〜3グループに束ねるところから始めると回ります。
この手順で決めた数字は、業界平均より根拠があります。公開されている業界別のROAS平均は、粗利率も計測方法(何をコンバージョンとして数えているか、アトリビューションの期間)もばらばらなので、自社の合格ラインとしては使えません。参考値として眺めるのは構いませんが、目標には据えないほうが無難です。
『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』も、ROASは比べるための指標で、適正値というものはない、と書いています。同書は、実際の獲得単価を上限の獲得単価で割った「広告投資バランス」で採算を見ています。1を超えれば採算割れ、1を下回れば、まだ広告費をかけられる余地がある、という見方です。
CPA・ROIとは何が違う?
| 指標 | 式 | 単位 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| ROAS | 広告経由の売上 ÷ 広告費 | 倍・% | 単価や購入点数がばらつく商材 |
| CPA | 広告費 ÷ コンバージョン数 | 円 | 単価が一定の商材、リード獲得 |
| ROI | 利益 ÷ 投資額 | 倍・% | 施策全体が儲かったかの判断 |
ROASとCPAは、同じことを別の角度から見ています。ROAS(倍)=客単価 ÷ CPA なので、どちらかを決めればもう一方も決まります。単価が3,000円から30,000円までばらつく商材ならROAS、定期便の初回のように単価が固定ならCPAが扱いやすい、という使い分けになります。
ROASとROIの違いは、分子が売上か利益かです。ROASは売上ベースなので粗利を見ていません。だからこそ「ROAS 100%=トントン」という誤解が生まれます。ROIまで出せるなら、そちらのほうが意思決定には近い数字です。
媒体をまたいだ全体を見たいときは、ショップ側の全体の売上を広告費の合計で割ります。媒体の管理画面が出すROASは、それぞれの媒体が自分の基準で計測した自己申告値なので、複数媒体の数字を足しても全体にはなりません。この「全体の売上 ÷ 全体の広告費」は英語圏では Blended ROAS と呼ばれます(日本語の定訳はまだありません)。
リピートがある商材は初回のROASで止めない
定期購入や消耗品のように2回目以降がある商材では、初回の注文だけでROASを判定すると、伸ばせる広告を止めてしまいます。
考え方としては、LTVの倍率で損益分岐ROASを割り引きます。
許容できる初回ROAS(%)= 損益分岐ROAS ÷ LTV倍率
LTV倍率は「一定期間にひとりの顧客が生む売上 ÷ 初回の売上」です。損益分岐ROASが200%でLTV倍率が2.0なら、初回は100%でも回収できる計算になります。
ただし2点、注意があります。ひとつは、回収までの期間ぶんキャッシュが先に出ていくこと。もうひとつは、LTV倍率は過去の顧客から出した数字で、新しく獲得した顧客が同じように買ってくれる保証はないことです。新規の流入源を変えた直後は、倍率も変わりうると見ておいたほうがいい、というのが実務での感覚です(ここは断定できる材料がありません)。
LTVの出し方はLTVの計算方法|実務で使う式とShopifyでの出し方にまとめています。
LTV倍率も、全体で1つにしないほうが安全です。『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』は、LTVを広告媒体・訴求・オファーごとに分けて出すよう勧めています。まとめて見ると、赤字の媒体をほかの媒体が補っている状態に気づけないためです。初回の割引はLTVを下げやすい、とも書かれています。割引で集めた顧客の倍率を、定価で買った顧客の倍率で割り引くと、許容できる初回ROASを甘く見積もることになります。
ROASを分解すると、どこを動かすか決まる
ROASは3つの数字に分解できます。
ROAS(倍)= 客単価 × CVR ÷ CPC
たとえばCPC60円、CVR1.5%、客単価8,000円なら、8,000 × 0.015 ÷ 60 = 2.0倍(200%)です。ここから同じROAS 2.4倍(240%)に持っていく道は3本あります。
表にすると、次のとおりです。
| 動かす場所 | 変化 | 結果のROAS |
|---|---|---|
| 客単価 | 8,000円 → 9,600円(+20%) | 2.4倍 |
| CVR | 1.5% → 1.8%(+20%) | 2.4倍 |
| CPC | 60円 → 50円(−17%) | 2.4倍 |
式の上では同じ効きですが、動かしやすさは違います。CPCは競合の入札に左右されるので自社だけでは決まりません。客単価はセット販売や送料無料ラインの設計で動かせます。CVRはサイト側の改善なので、広告を止めずに積み上げられます。
CPCがなぜ動いたかは、CPM(表示の値段)とCTR(クリック率)に分けると見えてきます。分け方はCTR・CPC・CPMの違いと計算式|EC広告で数字を読む順番に書いています。
まずCVRと客単価から当たるほうが再現性が高い、というのが実務での優先順位です。CVRの見方と改善順はECサイトのCVRとは?平均値の見方と改善の優先順位に書いています。
ROASを見るときに引っかかりやすいところ
媒体ごとの数字は足し算できない アトリビューションの期間も、ビュースルーを数えるかどうかも媒体ごとに違います。同じ1件の購入を複数の媒体が自分の成果として計上していることもあります。全体で見たいときは、ショップ側の売上と広告費の合計から出します。
値引き・返品・キャンセルが反映されない コンバージョン値に渡しているのが注文時の金額なら、その後の返品やキャンセルは引かれません。返品率が高い商材では、実態より良い数字が出ます。
税込と税抜、送料の扱いがそろっていない カート側が税込・送料込みの金額を送っていて、粗利率は税抜で計算している、といったずれはよく起きます。目標を決める前に、コンバージョン値に何が含まれているかを確認しておきます。
間接効果が入らない 広告を見て後日、指名検索から購入した分は、その広告のROASには乗りません。指名検索の数やサイト全体の売上が動いていないかも、あわせて見ます。
期間が短いと数字が暴れる 単価の高い注文が1件入るだけでROASは跳ねます。判断は、コンバージョン数がある程度たまった期間で行います。
ここまでの注意点は、どれも「管理画面のROASだけでは、その広告で売上が純増したかまでは分からない」という同じ話につながります。新規獲得と既存客を分けて評価するやり方は純増の広告運用に書いています。
参考にした情報
よくある質問
ROASとは何ですか?
広告経由の売上を広告費で割った指標です。Return On Advertising Spend の略で「ロアス」と読みます。広告費1円あたり何円の売上が返ってきたかを表します。
ROASの計算式を教えてください。
ROAS=広告経由の売上 ÷ 広告費 です。100を掛けると%表記になります。広告費50万円で売上150万円なら、3倍、%表記で300%です。
ROASは%と倍のどちらで書くのが正しいですか?
どちらも使われます。日本語の記事や社内資料では%表記が多く、広告の管理画面では倍に近い比率で出ることがあります。同じ資料の中で混ぜないこと、目標値を共有するときに単位を明示することのほうが大事です。
ROAS 100%なら赤字にはなりませんか?
赤字になります。ROAS 100%は売上と広告費が同額という意味で、原価も送料も人件費も引かれていません。粗利率50%の商品なら、広告費だけで収支を合わせるのに200%が必要です。
ROASの目安はどれくらいですか?
商材の粗利率で変わるので、共通の目安はありません。まず損益分岐ROAS(100 ÷ 粗利率)を出し、そこに残したい利益を上乗せして自社の目標を決めます。業界平均は粗利率も計測方法も違うため、そのまま目標にはできません。
ROASとCPAはどちらを見ればいいですか?
単価がばらつく商材はROAS、単価が一定の商材はCPAが向いています。ROAS(倍)=客単価 ÷ CPA の関係があるので、どちらか一方を決めればもう一方も決まります。注文単価に大きな開きがあるサイトでは、金額で置く上限CPAより目標ROASのほうが扱いやすくなります。
目標ROASは商品ごとに分けるべきですか?
利益率や購入後のLTVが商品で大きく違うなら分けます。粗利率60%の商品と20%の商品では損益分岐ROASが約167%と500%で3倍違うので、サイト全体で1つの目標を置くと、利益率の高い商品で取りこぼし、低い商品で赤字を出します。まずは粗利率の近いもの同士を2〜3グループに束ね、キャンペーンも分けるところから始めるのが現実的です。
- ROAS=広告経由の売上 ÷ 広告費。100を掛けると%表記になる
- ROAS 100%はトントンではない。損益分岐ROAS(%)=100 ÷ 粗利率で、粗利率50%なら200%が分岐点
- 目標ROASは業界平均ではなく、粗利率と残したい利益から逆算する。上限CPA=客単価 ÷ 目標ROAS(倍)で決められる
- ROAS(倍)=客単価 × CVR ÷ CPC に分解すると、どこを動かすかが決まる
- 注文単価の幅が大きいならCPAではなくROASで指定する。利益率やLTVが商品で違うなら、目標も商品別に分ける
- リピートがある商材は初回のROASだけで止めない。媒体をまたぐ合算もできないので、全体はショップ側の売上と広告費の合計で見る
この記事を書いた人永田 龍史
株式会社ULTRO 代表取締役Shopify Partner。Shopifyストアの構築・保守・広告運用・CRMを一気通貫で担当。個人として運用した広告費は累計40億円超。計測設計から逆算して、利益が伸びる仕組みを作っています。Google 広告の認定資格(検索・ディスプレイ・動画・ショッピング・アプリ・P-MAX・測定)と Google アナリティクス認定資格を保有。
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